レポート

漁業も米作りも養鶏も、生産者さんから直接学ぶ|教育旅行なら体験王国いばらきへ!

修学旅行などを始めとする教育旅行、「楽しい!」だけでは足りないと感じる学校が多くなってきている今。「どこに行くか」も大切ですが、「何を体験するか」はもっと大切ではないでしょうか。

茨城県は東京から日帰りもできる距離にありながら、第1次産業から宇宙・科学に至る幅広い体験ができるコンテンツと、それぞれの仕事に真剣に取り組んでいる人の熱に触れられる機会は数えきれないほど提供できる地域。限られた時間のなかでより多くを体験できる、教育旅行にはぴったりの場所です!

実は2023年、茨城県は「体験王国いばらき」というキャッチコピーのもと、国内最大規模の観光キャンペーンの開催地に21年ぶりに選出! ぜひ注目してほしいタイミングでもあります。
今、JRグループと茨城県内の自治体・企業や団体が一丸となって茨城県内の魅力を全国に発信中で、たくさんの方に茨城を訪れていただけるよう注力しているところです。
今年2022年は、そのプレキャンペーン期間。まずは茨城の魅力を各地の旅行関係の方に知ってもらうべく、11月10日~11日に教育旅行におすすめしたい場所の中からピックアップした数か所を巡っていただきました。

その訪問地の中からこの記事では、森と未来の学校がご提案するこだわりと誇りをもって働く生産者さんたちを尋ね、現地で触れてきた「熱」がどのようなものだったのかお伝えします。

【涸沼で漁業と自然に触れる】地域の宝である自然を守りながら、賢く使って暮らす人々

さて、訪れたのは涸沼。鉾田市、茨城町、大洗町にまたがる関東唯一の汽水湖です。

この日は茨城町にあるひろうら直売所「あいあい」を訪問。茨城町観光ボランティアガイドの別所さんが「涸沼は茨城町の宝です」という切り出しで、涸沼の自然の豊かさについて教えてくださいました。

地域の人たちが昔から豊かな自然環境を守ってきたので、
・鳥は86種類
・魚は110種類
・植物は398種類
も生息。汽水湖なので、海の生き物も、川などの淡水で見られる生き物も、両方みられるからこその数です。
絶滅危惧種のヒヌマイトトンボや、毎年2,000羽以上でやってくる渡り鳥・スズガモなど、特徴的な生物も紹介してくださいました。
涸沼は2015年にラムサール条約の条件湿地に登録されました。条約に基づいて、湿地の守る活動はもちろん、その恵みを賢く使うワイズユースも進めています。

たとえば、名産品のシジミ。茨城は島根・青森に次ぐ日本で3番目の生産量を誇りますが、その60%が涸沼で取れるのだそう。
涸沼のヤマトシジミは大きいのが特徴。一般的には1シジミは10mm以上の大きさになればとっていいことになっているけれど、涸沼では自然が枯渇しないよう12mm以上のものでないと漁獲できない決まりになっているからこんなに大きなシジミが食べられるんですね。動力をつかわない手掻き操業だから、シジミに余計な負担をかけずに育てられるのもおいしさに繋がっていると知りました。

お話のあとで、前日にとったばかりという新鮮なシジミを使ったお味噌汁を、皆さんでたっぷりいただきました。あまりのおいしさに、教育旅行で訪れる生徒さんたちの中には「これまでシジミは苦手だったけれど、食べられるようになった!」と言う子も。2杯・3杯とお代わりする子も多いんだとか。

その後は広浦漁港に移動。船に乗って、漁の様子を見学させていただきます。前日に仕掛けておいた網を引き上げると、そこに何匹もの魚がかかっています。すごい! 運が良いと、ウナギがかかったのを見ることができるのだとか。

船の上で、魚の種類や漁のこと、近くを通り過ぎていく鳥について、いろいろ教えていただけます。この時間は微風が吹いていたのですが、湖上でしばし船におだかやに揺られながら、日常にはない心地よい時間を過ごすことができました。風が止んでいる時間帯だと、湖面が鏡のように綺麗なのだそう。それもぜひ見てみたいですね。

その後は一度漁港に戻り、船から漁師の皆さんの手作りいかだに乗り換えです。いかだって、乗ったことがある人なかなかいないのでは?パドルを手に、声をかけあいながら何とか漕いでみますが、左右のバランスや前後の人とのタイミングが合わないとなかなか難しい……「子どもたちだと、掛け声がしっかり出ているクラスはゴールするのが速いです」とのことでした。涸沼に来ることがある学校の児童・生徒のみなさんには、ぜひ団結度を高めて挑戦してみてほしい体験でした。

この日は、いかだ体験のあと徒歩で「うおふね」さんに移動して昼食をとりました。涸沼産の天然うなぎと、シジミ汁。そして、見学させていただいた漁であがった取れたてのボラを、即お刺身にして出していただくというサプライズも。漁港の方とうおふねさん、連携しての心遣いに感謝しつつ、涸沼の自然をいただきました。


ちなみに、この旅では涸沼湖畔に佇む「いこいの村涸沼」に宿泊。穏やかな涸沼の景色や夕日、茨城県産厳選素材のお料理をゆったり楽しんでいただけたことと思います。

【茨城町で触れる環境にやさしい農業】身体に良い食物づくりを、伝統製法を守り伝える「ファームランドさいとう」

あたたかくおだやかな気候、広大な関東平野が広がる茨城県は、農業産出額は全国第3位の全国有数の農業県でもあります。独自のこだわりをもっている農家さんはたくさんいらっしゃるのですが、今回のツアーではファームランドさいとうの斉藤卓也さんを訪ねました。こちらでは、農薬や化学肥料を一切使わずにアイガモと一緒にお米を育てるあいがも農法米の生産をメインに、大豆や麦、ベビーリーフなどもつくっている農家さんです。

栽培面積は東京ドーム3個分ほど、40枚もの田んぼを管理しているのは、お父様と2人のみ。それを可能にしているのが各田んぼにつけられている水田センサー。気温や日照などのデータを測定し、少ない人数でも管理しやすくしているそう。また、稲の管理を行うのは可愛らしいアイガモたち。稲を植えた田をアイガモたちが自由に動き回ることで、
・草が生えにくくなる
・虫を食べてくれる
・穂が強くなり、おいしいお米ができる
などといった良さがあります。

アイガモが大きく育ってしまうと稲の間を泳げなくなってしまうため、毎年ヒナを迎え、稲の穂がつく9月頃までは田んぼで仕事をしてもらう。その後11月頃までは飼育し、最終的にアイガモたちは、ファームランドさいとうで作った野菜を使って販売しているお弁当や、鴨飯おこわなどに入れるお肉となるそうです。お米と鴨を一緒にして食べることで、「いただきます」とは命をいただいているんだという実感が強まるとの話に、参加者の皆さんも熱心に耳を傾けていました。

一通りお話をうかがった後は、斉藤さんとアイガモたちが作った有機栽培のお米をいただきました。
お米の鮮度は、精米日からの日数で決まるそう。斉藤さんはこの日、訪れた方がよりおいしいお米を味わえるようにと、精米したてのお米を、土鍋で炊いてふるまってくださいました。こだわって育てられた精米したて・炊きたてのお米の香りの良さと、味の濃さに、皆さんいつもより多めにお米を噛みしめながら大切に味わっている様子でした。

その後は場所をビニールハウスに移し、ベビーリーフの種まきをさせていただきました。サラダ等でいただく機会もあるベビーリーフ、実は決まった野菜のことではなく、さまざまな葉物野菜の新しい芽が混ざり合ったものとのこと。1人ずつに配られた小さなカップの中には、さまざまな色や形が混ざり合った種が入っていました。

この種を、一人あたり50か所ずつに蒔いていったのですが、これがなかなか大変な作業。土に穴を開け、種を少しずついれていき、土をかぶせる。腕を伸ばせば届くくらいの範囲だけでもこれだけ大変なのだと知れたので、おいしい野菜やお米を毎日食べられる裏では生産者の方がどれだけの手間をかけてくださったのかを想像できるようになりました。

お米も野菜も、手にとるまでにどんな風に育てられ、どれだけのこだわりをもって作られたものなのかが分かる体験ができました。個人的には、食事一口ずつをこれまでよりも少し大切にできるようになった気がします。

【茨城町で平飼いのこだわり卵を】アニマルウェルフェアに配慮した持続可能な生産と消費の実現させる「小幡畜産」

くり、れんこん、はくさい、水菜など、農作物で生産量1位のものが複数ある茨城県。実は、鶏卵の生産量も全国1位なのはご存知でしょうか。

この日は茨城の養鶏場の中から、茨城町の小幡畜産を訪れました。こちらは以前双葉台中学校の皆さんの体験学習を受け入れてくださった鶏卵場。お子さん達が訪れたときと同様に、鶏舎の中に入っての見学を計画してくださっていたのです。が、訪問日の直前に県内の別の養鶏場で飼育されている採卵用の鶏から、鳥インフルエンザウイルスが検出。小幡畜産さんからは距離がある場所なので影響はないとのことでほっとしたのですが、万が一のことを考えて、この日は鶏舎の外から見学する形で対応いただきました。

もしも鳥インフルエンザが検出されたら、その養鶏場のにわとりはすべて殺処分。感染拡大を防ぐため、養鶏場からの距離によってはにわとりや卵の移動・出荷の制限がかかるとのこと。そうなると周囲の養鶏場さんにまで半年間ほど影響が出るといいます。これまで鳥インフルエンザのニュースに触れることはあったし、大変なことだなぁとは感じてきたはず。しかしそれが誰に、どんな影響が出るのかまでは想像が及んでいなかったことに気付かされます。意図しない形ではありましたが、毎日のように食べる卵に関わる方のご苦労を知る機会になりました。

そんな訳で、しっかりと消毒を行い、鶏舎の外からにわとりを見せていただきながら農場長の上井さんからご説明をいただきました。現在、アニマルウェルフェアの考え方にもとづいて平飼い用の鶏舎を順次建設中。新しくなった鶏舎では、同じ月齢のにわとり達が鶏舎内を自由に動き回れるようにして飼われていました。

「若いにわとりは臆病なんです」と上井さんがおっしゃるとおり、若い鶏舎では見学の皆さんが歩いてくるだけでにわとりたちは一斉に鶏舎の奥の方に逃げていきます。それが月齢を重ねたにわとりたちは人が歩いてくるくらいではびくりともしません。さすがの風格です。見た目も、思春期にはいる4か月目くらいからくちばしが黄色くなくなってきて、トサカが上がり出すといいます。ひよこからにわとりに成長することは知っているけれど、こうした機会がなければどんな過程を経て変化するのかについて思いをめぐらすこともなかなかありません。ご参加の皆さんも、上井さんの話を受けて月齢ごとのにわとりたちの変化を見比べて驚いている様子でした。

鶏舎内の巣箱は段の上に設置されていたのですが、これはにわとりが元々森で暮らしていた生き物で、高い場所を好むからだそう。にわとりは地面を歩くものだと思っていますが、そこまで上がる筋力が必要なので、上井さんのところではにわとりを若いうちから飼うようにし、鶏舎の中で走る練習をさせるようにしているとのこと。運動量が多いので、平飼いしているにわとりのお肉は固くなること。たくさんのメスにわとりを飼っているので、オス化する個体が出てくること。にわとりの世界でも生存競争があって、いじめのようなことも起きること。存在自体は知っているはずのにわとりでも、生態については知らないことだらけなのだと思い知らされることばかり。
日々お仕事で携わっていらっしゃる方の生の言葉からは、学びも得るものも数えきれません。お子さんたちなら尚のことに違いありません。

▼水戸市立双葉台中学校1年生が来た際のレポートはこちら。合わせてお読みください。
”食”で茨城を支える仕事を知ろう-茨城町 小幡畜産-|アーストラベル水戸|note

漁業も米作りも養鶏も、一度の旅行で学べる茨城県

今回の旅行では、漁業・米や野菜作り・養鶏の3つの一次産業に1日で触れていただきました。こんなプランが組めるのも、コンパクトな中に魅力がぎゅっと詰まっている茨城県だからこそ。
一次産業だけでも本記事でご紹介下以外の体験もまだまだご提案可能です。ぜひ探求型学習旅行の際は茨城にお越しくださいね~!

茨城県で、子どもたちの未来につながる学びを得られる教育旅行をお届けするプロジェクト・森と未来の学校では、学校ごとのご希望に合わせたオリジナルの旅をご提案。
「総合的な学習のテーマに合わせた旅行にしたい」
「自然と科学、どちらにも触れさせたい」
などといったご希望に合わせ、県内や首都圏の学校の先生方と一緒にプランを考えて実施しています。
本記事以外にも、校外学習や修学旅行でお子さん達に訪れてほしい学べる場所がたくさんあります。教育旅行のご相談は、お気軽にお問合せください。

▼各学校のレポート記事はこちらからまとめてご覧いただけます。
教育旅行アップデート|アーストラベル水戸|note

記事:荒川ゆうこ

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