インタビュー

安心安全な食を届けるこだわりの有機栽培を体感する校外学習|ファームランドさいとう

斉藤 卓也さん

ファームランドさいとう

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教育旅行で農業体験を考えているのなら、ぜひ来ていただきたいのが茨城町。都心からは車で2時間ほどのこちらは、県内で農業に力を入れている地域のひとつなんです。町内には農業、自然・食べ物をテーマにした多彩な体験を提供している「ポケットファームどきどき茨城町店」という農業体験型レジャー施設もあります。

先進的な農業に取り組んでいる方もいて、今回ご紹介するファームランドさいとうもそのひとつ。こちらでは現在、一度は公務員の道へ進んだ4代目の斉藤卓也さんが家を継ぎ、農薬や化学肥料を一切使わずに、自然の力を活かした有機農法で多様な野菜を生産しています。

ファームランドさいとうさんには、森と未來の学校を通じてすでに県内外の学校の生徒さんたちに農業体験などをさせていただいているのですが、なぜ私達の取組みに協力してくださるのかを、農業への思いとあわせて伺いました。お話の内容を、斉藤さんのやわらかな笑顔とともにお届けします。

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職場体験から10年かけて、効果が芽を出してきた

学校さんの受け入れは、10年以上前からしていたんです。町内の明光中学校の生徒さんが来て、職場体験をしてもらっていたのですが、コロナの流行で一度完全に止まってしまいました。そこで声をかけてくれたのが、森と未来の学校。茨城町役場の方を通じてお話をいただいたんですが、「茨城町で一次産業のキッザニアをつくりたい」と聞いてすごくいいなと思ったんです。うちでしている農法などを来てくれた人に直接会って伝えられる機会は多くないので、すごくありがたいことです。ぜひ協力させていただけたらとお返事しました。これまでに何度も生徒さんが来て職場体験をしてもらったり、地元で働く大人を紹介する「仕事人図鑑」という取組みで取材に来てくれたりしました。

体験内容は、ベビーリーフの種まきや大豆の選別、時期があえば収穫も手伝ってもらいます。例えば大豆の選別は、豆をすべて広げて、割れたものや見た目が悪いものを手で取り除いていきます。地道な作業なので、生徒さんたちが来てやってくれるのは、こちらも助かっているんです。どの作業も生徒さんたちは数分で「大変だ」って言いますが(笑)。人気があるのは、コンバインなどの農業機械に自由に乗れる時間ですね。エンジンはかけない状態ですが、近くで見たり乗ってみたりすることはなかなかないので、思った以上に喜んでくれる生徒さんが多いです。

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ここでの体験を家に帰って親御さんに伝えてもらえると、「ああやってできているんだ」って見え方が変わるし、食べるものも変わってくるんじゃないかなと。自然と感謝の気持ちも生まれるでしょうし。ほとんどの子にとっては、農業に触れるのはそのとき限りなんですけど、自分の身体を通した経験をして、それが何かのきっかけになってくれたらっていう思いがあります。

農業体験してもらった成果・効果はすぐに何かの形になるものではないけれど、時間はかかるけれどちゃんと何かの芽は出てくるんだなと思うんです。最初の頃に体験に来てくれた中学2年生だった子たちは、今はもう20歳過ぎ。あの子たちは今はお買い物に来てくれる消費者側になっているんです。そのうちの一人が、新米の時期に結構たくさんの量うちのお米を注文してくれたことがありました。「ファームランドさいとうで体験をしたことがあるので」と言って。やっぱり嬉しいですよね。

他にも、たまたまここまで迎えに来てもらったタクシーが、うちに体験に来た子のお父さんだったということもありました。「ここ、前に来たことがあるんです。うちの子どもが職場体験のときに送ってきました」と教えてくれて。そうやって、思ってもみなかった形でご家族にまでじわじわと広がっているのを感じます。

 

ファームランドさいとうの、安心・安全のためのこだわり

ファームランドさいとうで作っているのは、お米と麦と大豆、ベビーリーフと枝豆、それからビーツ。基本的につくっているのは自分の食べたいものです。有機栽培米など、環境にやさしい農業をしています。販売は直売をメインに、レストラン関係の方から要望があるビーツなどはお店へ。お米は、お弁当屋さんや定食レストランをしている会社さんと契約栽培しています。実はみなさんも食べたことがあるかもしれませんね。

私たちがこだわっているのは、安心・安全です。例えばお米は、有機JAS認証を取得した有機栽培の「あいがも農法米」。有機栽培が注目されだした父の代から、うちでもどうにかできないかと検討した結果始めました。農薬や化学肥料は一切使わずに、田植え後にあいがもの雛を田んぼに放って一緒に米作りをします。あいがもは、田んぼの中を泳いで稲を強くしたり、害虫を食べたりしてくれます。一般的な米作りより収穫量は少なくなるけれど、一粒ずつに味が凝縮されて美味しいお米になるんですよ。

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かもちゃんたちは稲と一緒に大きくなって、稲の穂が出てくるとそれも食べてしまいます。なので、穂が出始める8月頃にはお仕事は終了。そこからは小屋で3食プールつきのバカンスを楽しんでもらって、その後は可哀そうではありますがお肉になります。直売所では加工品やお弁当の販売も行っているので、かもちゃんたちは最後、育てたお米と一緒にお弁当になってお客さんのもとに届くんです。そういうストーリーも食卓まで届けたいと思っています。

 

茨城町での農業体験で体感してほしいことは?

最新技術とアナログな部分の掛け合わせが農業です。例えば稲刈りも、気候の変化が大きくて最近の農業は、例年通りというのは通用しなくなっています。2023年はすごく暑かったので稲刈り時期が例年よりかなり早くなったように、「積算気温が何度になったから」とデータを使って時期を見極める必要があります。技術の進歩もものすごく早い分野なので、新しい技術を取り入れつつ、人の手を使わなければいけない作業や経験知も必要です。

自然に合わせる仕事なので、トライ&エラーのスパンが長いのも特徴ですね。例えばよりよい食物を育てるのに肥料の配合を変えてみるのだって、次の改善案を試せるのは翌年になってしまう。数年がかりで可能性を確かめていって、上手くいく方法が見つけられた時には特別にうれしいです。

そういった大変さはあるけれど、やっぱり自分で作った食物で、人に喜んでもらえるのは一番のやりがいで、一番楽しいですね。生徒さんたちが来た時には、作物がどのようにできるのかを体験を通して自分の身体で感じてほしいと思っています。私もウィスキー工場の見学に行ったんですが、説明を聴きながら作っている過程を見て、実際に自分の経験になると、それから飲むウィスキーはやっぱり美味しいんですよね。言葉で理解するというより、腹に落ちるような理解をしてほしいです。

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茨城に来ると、何でもあります。山があって、海があって、平場もあって。県外に出ると、その良さを実感します。この辺りは関東平野で平らな土地が広がっているのですが、北に向かうと県北地区の日立市をこえた辺りで山間部に入ってきます。「関東平野終わったな」と思うんですね。県外でも、山間地は景色が綺麗だなと思うけれど、「この棚田や段々畑で農業するのは大変だな」と思ってしまいます。人の流れが慌しい都会とは違う、ゆったりした時間や空の綺麗さを、体感しに来てほしいです。

斉藤卓也さんが経営するファームランドさいとう

〒311-3123 茨城県東茨城郡茨城町若宮849‐1

ホームページ http://farmland-saito.com/

Instagram https://www.instagram.com/farmland3110/

ファームランドさいとうへの校外学習のご相談は、森と未来の学校まで。学校や児童・生徒さんの実態に合わせてオーダーメイドの校外学習をサポートします