インタビュー

食・自然・アート…都心の学校から茨城へ教育旅行に来る魅力とは|東洋英和女学院小学部・𠮷田太郎先生インタビュー

東洋英和女学院小学部 部長 𠮷田太郎先生

東洋英和女学院小学部 部長

「校外学習や修学旅行でなければできない経験もある」と、学校旅行の必要性をお話してくださったのは、東洋英和女学院小学部の部長・𠮷田太郎先生です。
𠮷田先生はご自身で茨城県内の魅力的な場所や人を見つけ、前任の学校では2013年から宿泊学習のプログラムを実施してこられたご経験があります。もしかしたら茨城県民以上に県内に詳しい、茨城への愛と知識にあふれた先生です。

森と未来の学校では、以前6年生の修学旅行を担当させていただき、東洋英和女学院さんの旅行にご一緒するのは今回が2度目。4年生の旅行引率の合間にお時間をいただき、𠮷田先生に茨城での教育旅行に関する思いを伺いました。森と未来の学校のスタッフ・飯塚との対談の様子をお届けします!

ーーはじめに、学校のご紹介をお願いできますか。

𠮷田部長先生:東洋英和女学院は、1884年の創立。約140年の歴史があります。幼稚園から大学まであるキリスト教主義教育を行う一貫校で、六本木の高いビルに囲まれています。
小学部は1学年各2クラスずつで、全校児童は480名です。

私自身は昨年度まで他校で9年間教頭をしていました。東洋英和女学院小学部の部長に就任しましたのは2022年4月からになります。

飯塚:東洋英和女学院さんの旅行を担当させていただくことになったのは、小学部の先生と、私たち森と未来の学校の代表・尾崎との共通の知り合いの方からのご紹介がきっかけでした。
6月に6年生の修学旅行を担当させていただいて、今回の4年生の旅行でご一緒するのは2回目となります。今回もありがとうございます。

ーー宿泊旅行の行き先に、茨城を選ばれたのはどうしてですか。

𠮷田部長先生:私自身は、前任校で、スタディツアーというプログラムを企画した2013年以来ずっと茨城に通っていたのです。常陸太田市の金砂郷に、各学年の子ども達を連れて年に5・6回以上、茨城に来る生活を続けてきました。その際は旅行会社に依頼するのではなく、知人の紹介から、自ら地元の方々との関係性、繋がりを広げて、という形で実施してきました。

児童を連れてくるのですから、道を覚えなければなりませんし、土地勘を養う為に、プライベートでも何度も川遊びに来たり、道の駅を巡ったりしながら、「ここ学校として使えそうだな」などいうように、行き先やプログラムを開拓してきました。

東洋英和女学院は長野県軽井沢追分に寮をもっているので、夏には学年ごとにそこを訪れて夏期学校を行うことが恒例となっています。また、6年生の修学旅行では、京都や奈良といった関西方面へ出かけるプログラムを継続してきました。

しかし長引くコロナ禍で、遠方の場合には発熱時のお迎えの対応などが懸念され、これまでの訪問先だと宿泊学習ができるか分からない状況がありました。そんな中、「近場で、子どもたちがいろいろな体験をできる場所はないだろうか」という声が上がり、浮上したのが「茨城」ということで、こちらを訪問することになりました。

飯塚:今回の下見もご一緒したのですが、部長先生は私たちよりずっと茨城に詳しくて驚きました。今回4年生が訪れた石切山脈や笠間焼体験は、「選択肢の一つとして」と、先生からご提案いただいたものでした。

女子校なので、6年生と同じくお花の体験ができるといいかな、と私からはフラワーパークをご提案していました。しかし、学校で学んでいることに少しでも近づけたいとのことだったので、ご提案いただいた笠間での陶芸を行程に入れることになりました。

𠮷田部長先生:茨城はアートも強みです。アートは大事ですからね。

飯塚:私自身は茨城出身なのですが、地元にいた頃はアートのイメージは全くもっていませんでした。気付いたのは、地元を離れて東京に出て「笠間っていいよね」などと言われていたからです。あ、茨城っていろいろあったんだな、って。同じように、茨城にアートのイメージをもっている方は多くないかもしれません。

𠮷田部長先生:茨城は農業で十分潤っている地域だから、観光などで必死に人を集めなくてもよいだけの収入があって、宣伝や発信にはあまり力を入れてこなかった面はありますね。アートもですし、茨城にはいろいろな魅力がありますよ。

ーー今回の4年生の旅行で、児童の皆さんに感じてほしいと思われた茨城の魅力は何でしょう。

𠮷田部長先生:まずは、食の豊かさです。
僕自身は出身が京都ということもあり、東北や茨城に通うようになったのは東日本大震災の後からなのですが、そこで教えられ、気がついたのは、地方の暮らしはすごく豊かだということです。海の幸も、山の幸も楽しめる。観光客向けじゃないお店に入っても、当たり前においしいものに出会えます。
この間、土浦で偶然入ったお店も、レンコンがすごくおいしかった。

飯塚:ちょうど旬の時期でしたね。

𠮷田部長先生:東京なら全国のおいしいものを楽しめるけれど、本当においしいものに出会いたいとなると高級店に行かなければなりません。教育への関心が高いご家庭でも、家族旅行ではアクセスするのが難しいものもあります。子どもたちには原体験になるような、学校旅行でしかできない旅をさせてあげたいと思っています。

飯塚:今回の旅行では、笠間で栗農家さんがつくってくださった栗のお菓子をいただいたり、涸沼でとれたシジミのお味噌汁を飲んだり、干し芋を作っているおみ農園さんでふかしたお芋を試食したりという内容を盛り込みました。生産している場所を実際に見て、できればその場で食べられると記憶にも残ると思うので、こういった内容にさせていただいています。

𠮷田部長先生:ほかにも、日常にはない体験をしてほしいと思っています。
今回の涸沼湖で漁船に乗るなどといった、お家では経験しにくいだろうという体験をいろいろとさせてあげたいですね。

普段は都会の真ん中で生活していて、タワーマンションから通学してくるお子さんもいる学校です。地方の人々に出会い、第一次産業の現場を自分の目で見て、自然の中での美味しい食べ物、生活などについても知ってほしいです。

飯塚:正直、都会のお子さんが茨城に来て、悪い意味で驚かれないかな、という不安もありました。けれど今日も、前日までの雨でぬかるんだ道を「面白い感覚!」「じゃり道ってないなぁ」と言いながら、楽しんでくれている様子を見てほっとしました。

𠮷田部長先生:都会の学校だからこそ、東洋英和では先生たちも意識的に自然に触れられるような体験を取り入れるようにしています。木に登るとか、焼き芋を校内で焼いて食べるとか。子どもたちはとても楽しんでいる様子です。

飯塚:担任の先生からもバスでの移動時に「畑にはいろいろなものが植えられていますよ」「低い建物が多いから、綺麗な夕焼けがよく見えますね」など、茨城にきたからこその景色にお子さんたちの目がいくような言葉掛けがありました。

ーー今、1日目の行程を終えたところですが、今回4年生のお子さんたちと茨城を巡ってよかったと先生がお感じになるのはどんなことですか。

𠮷田部長先生:やはり、宿泊学習で一緒に寝泊りする中で得られるものは多いです。
本校は創立当初、「花子とアン」でも知られるような寄宿舎から始まった学校ですので、一緒に寝泊りをする中での仲間づくりや生活指導に価値をおいてきました。寄宿生活はなくなった今でも、1年生から毎年、軽井沢追分での宿泊行事に価値をおき、行ってきました。

コロナ禍で2年間、宿泊行事が行えませんでしたが、今年の夏はようやく長野での1泊2日の宿泊行事を予定していました。しかし、直前にコロナの影響で中止となってしまったのです。なんとか宿泊行事をさせてあげたいという担任の先生方の熱意もあり、検討を続けてきましたが、この時期になってしまってはもう長野は寒い。ということで、今回の茨城行きは急きょ決まったものでしたが、実施できて本当に良かったです。

飯塚:下見をしたのも10月29日と、旅行当日まで1か月を切った直前でした。お忙しい中でも先生ご自身が来て回られるから、道の幅や移動距離、お手洗いのことまで具体的に考えてくださいました。

教育旅行だと学校の先生方は皆さんお忙しいので、5年生は例年ここ!というように、決まった内容になっているところが多いです。ですが私たち森と未来の学校では、茨城をフィールドにして、その学年のお子さんたちの実態や、体験してほしい内容にあわせたプランをつくり、さまざまな経験をしてほしいと考えています。

今回のように一緒にご相談しながら一緒にプランを考え、新たなチャレンジも取り入れてくださる学校はまだまだ少ないので、東洋英和さんのお取組みは本当にありがたい限りです。

𠮷田部長先生:本校でも計画からすべてをお任せでやっていただく旅行もありますが、私は内容を丸投げするのは性分に合わず、自分で納得したものを子どもたちに体験させてあげたいと考えてしまうのです。下見で実際に足を運んで、顔を合わせて会話をし、一緒に食事をすると信頼が生まれます。森と未来の学校の皆さんはそこに一生懸命関わってくださるので、好感をもっています。

ーーさらに期待することはありますか。

𠮷田部長先生:茨城ならではという体験コンテンツもあると、また来てみたいなと思えます。本校では5年生が社会科の授業で米作りを学んでいますが、県内で田植えと稲刈りを体験させてくださる田んぼがあれば、1泊2日で季節を変えて年2回茨城にこられます。

今日は客室から涸沼湖が見える宿「いこいの村涸沼」を貸し切りにしてもらっていますが、とても贅沢です。せっかくこういった場所とのつながりをもっているのだから、ここを拠点にした体験プランを考えてもいいかもしれない。食事も土地のものにこだわって、米作りで来たらお米にフィーチャーして塩むすびを出すとか。ストーリーをもたせて、ここでしか食べられないものを出してくれるといいですね。

飯塚:東洋英和女学院の先生方は皆さん私たちに寄り添って一緒に旅行をつくってくださる貴重な学校さんです。
部長先生は茨城での豊富な教育旅行の経験から、社内の上司であるかのような視点でご意見くださるので、たくさん学ばせていただいています。これからも県内の魅力的なコンテンツをどんどん開拓していきますので、プラン作りなど今後もぜひご一緒していただきたいです。
引き続きよろしくお願いいたします!


私たち森と未来の学校は、茨城県での教育旅行を通して「子どもたちの学び・体験のアップデート」、「茨城県の社会問題を解決」することを目指しています。
探究の種がたくさんある茨城での「旅」は、日帰りも可能な首都圏のお子さんたちがこれからの変化が多い時代を生き抜く力をつけるのにぴったりな場所です。探究型教育旅行について、お問合せからお気軽にお問い合わせください。

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