インタビュー
土地勘がなくても魅力ある人々と出会える茨城探究|鎌倉学園 中学校・高等学校 山﨑真介先生インタビュー
鎌倉学園 中学校・高等学校・山﨑真介先生
鎌倉学園 中学校・高等学校 職員
神奈川県鎌倉市にある鎌倉学園さんの「総合探究プログラム」も2年目。学校や生徒さんの雰囲気をつかめた今年度は、ブラッシュアップした内容で学びをサポートしています。実は、昨年度の総合探究プログラムの発表会では、茨城をテーマにしていた生徒さんが生徒投票で投票数一位を獲得。茨城の魅力をまとめてくれた探究の発表が校内でもPR効果を発揮したのか、今年は26名の高校一年生が茨城で探究学習を行うことになりました。昨年度より多くの生徒さんが来てくれて、うれしい限りです。
教育理念の一つ「自主自律」の精神に沿って、生徒の「内発的な動機付け」を促す学習プログラムに位置付けられているこの探究学習。2年目の今年は想いで進めていらっしゃるのか、今年度、茨城県の探究コースを担当している山﨑真介先生にお話を伺いました。
茨城に来て、人生を楽しんでいる人たちに出会えた
ーーはじめに、学校のご紹介をお願いできますか。
神奈川県鎌倉市にある鎌倉学園中学校・高等学校は、中高一貫教育をしている私立の男子校です。前身は、建長寺の僧侶の子弟に教育を行う「宗学林」。1921年に旧制中学となり、以来「質実剛健・自主自律・文武両道」を教育理念としてきました。中でも自主自立は重視していて、生徒自身に考えさせることが多い、自由な校風が特徴です。
ーーありがとうございます。今回、高校一年生の生徒さんたちと2日間茨城を巡っていただきましたが、山﨑先生は率直にどんな感想をお持ちですか。
僕自身は一番に、人の良さや真面目さが印象に残りました。
たとえば、今日の昼間の、涸沼でのおじいちゃん。この暑さの中で、漁やいかだの漕ぎ方を熱心に指導してくれました。しゃがんで聞いていてもしんどい暑さの中でよくやってくださるなと思ったけれど、やっぱり仕事について話す様子が楽しそうなんですよね。
そのあとで、しじみ汁を振る舞ってくださった方々も、生徒を自分の子どもや孫のように温かくもてなしてくれました。
人生を楽しんでいる人たちにお会いできて、それぞれの想いは生徒たちには伝わった様子でした。各自、気付かされたことがあったんじゃないかな。
ーーこれまでに茨城にいらっしゃったことはあったのですか。
はい、茨城には何度か来ています。担当教科が理科なこともあって、訪れるのは理科施設が多いつくば市がほとんどですが。コロナ前は、生徒たちが科学技術や植物に興味をもてるような機会をつくろうと、学校行事でくることもありました。
目指しているのは、「内発的動機付け」ができる探究学習
ーー今回の訪問は、探究学習の一環と伺っています。どのような授業なのですか。
2022年度から総合的な探究の時間が導入されることになったので、研修旅行と兼ねる形になったのです。「総合探究プログラム」という名称の高校1・2年生合同授業として、学校として力を入れて行っています。
探究なので、生徒たちは、自分自身でテーマを設定してもよいし、学校側で設定した複数のプログラムの中から関心のあるものに参加してもよいのです。学校から提示したテーマの中には、学校のある鎌倉周辺のものから、福島・北九州などの宿泊を伴う遠方のもの、元々研修旅行で訪れていたベトナムに行くコースもありますね。
茨城をテーマにした探究は、昨年に続き2年目。「茨城の魅力を見つけ発信しよう!その過程で県の抱える課題を考えよう!」というコンセプトで、夏と冬に一度ずつ一泊二日で茨城を訪れます。
今回の夏のフィールドワークは、まずは自分たちの目で茨城を見てみるのが目的です。神奈川からは近いのですが、今回が初めての訪問になった生徒もいました。
https://note.com/morimirai/n/n54054a1098b8
https://note.com/morimirai/n/n3487088a0c84
これをもとに学校で各自のテーマを設定し、探究。冬にはテーマに沿う各自の行程でフィールドワークを行う予定です。
ーー探究テーマの選択肢に茨城が入っているのは、森と未来の学校がきっかけと伺いました。
そうです。僕自身は昨年度の担当教員から引き継いだのですが、森と未来の学校という、探究に力を入れている団体が茨城にあったというのが一番の理由だったそうです。テーマ候補を探しているときにご縁があって、それなら茨城も候補に入れようという流れでした。
ーーありがとうございます! ご一緒させていただいて「良かった」と感じることがあればお聞かせください。
茨城に精通しているスタッフが、生徒たちの希望を踏まえた上で、行程を練り上げてくださるのは良いですね。2日間で、茨城の科学技術、第一次産業、観光、人と触れあうことができました。
前任の教員からは、冬の個別フィールドワークを、取材先や交通手段まで相談に乗ってもらいつつ計画できたのがよかったと聞いています。昨年度は担当の橋本さんが中心にアーストラベルのスタッフの方から生徒たちへ取材先を提案してもらったり、紹介してつないでもらったりしながら実施できたそうです。生徒たちも、「満足度が高い旅ができた」とアンケートで答えていました。
https://note.com/morimirai/n/nf57dd03c4b4e
夏に2日間訪れたところで、土地勘がなければ探究テーマにあわせたプランをつくるのは難しいです。可能であれば、今年度も昨年度同様に生徒たちと関わって冬の計画をサポートしていただけたらありがたいです。
ーーこの学習を通して、目指していることをお聞かせください。
この探究学習では、学校全体で「内発的動機付け」をしたいと考えています。さまざまな場所に行き、多くの人に出会って話をすることで、生徒たちが将来につながる何かを見つけるきっかけになればと願っています。
夏のフィールドワーク後の生徒さんの声
夏のフィールドワーク後に、「茨城の印象は変わりましたか」という質問をしました。ほとんどの生徒さんが「変わった」と回答。自然豊かな田舎で、具体的にはよく分からないというところから、2日間の旅を経て「思ったより発展している」「最新技術を活かした農業」「幅広い魅力がある」など、良いところをたくさん見つけてくれました。
下記に、3名の声を紹介させていただきます。
茨城は何も無いところだと思っていたけれど、実際行くことによって良さを感じれた。茨城があるから関東の人は新鮮な野菜を食べれるんだなと思いました。
以前は、「茨城は田んぼや畑がずっと続いていてその中心に近代的な研究都市がある」というイメージだったが、今では「豊かな自然の中での第一次産業が盛んで地域の人同士のつながりが深く、最先端の科学で宇宙や世界ともつながるまち」というイメージに変わった。実際に茨城で仕事をする人に会いに行くことで、知らなかったことを新しく学べるので、ほかにも茨城の中で様々なところに行ってこのイメージを深めたいなと思った。
茨城県と言うと、東京や千葉、埼玉とは別世界のようなふわふわとしたイメージでしたが、今回のフィールドワークを通して、アクセスの良さや、茨城ならではの体験活動など、多くの魅力を知り、こんなに良いところが近くにあったんだ!、という風に劇的な茨城のイメージの変化がありました。
担当スタッフ・橋本より
鎌倉学園さんの「総合探究プログラム」2年目は、昨年度の旅をブラッシュアップしてサポートをさせていただいています。
昨年度の夏フィールドワークは、ご相談の上茨城ならではの自然や一次産業といった「森」を巡る旅を実施しました。しかし、ほとんどの生徒は観光や食をテーマに設定。「森」に関するテーマを設定した生徒さんは1組のみでした。
それを踏まえ今年度は、生徒さんたちが探究する地域を選ぶ説明会の段階から、関心の高かった「茨城の一次産業・食・観光」の3つをテーマにすることをアピール。夏のフィールドワークでも、その三要素をさまざまな角度から見られる行程を組みました。
1日目を終えた時点では
「見学した宇宙産業を深掘りしたい」
「観光についてグループで調べたい」
「農業に興味があるから、特産品を調べてみたい」
など様々な声が上がりました。2日目を終えて、学校に戻った生徒さんたちが最終的にどんなテーマを設定するのか楽しみにしています。
昨年度、茨城を探究した生徒さんの中には、その後も個人的に茨城に来てくれている子がいます。冬フィールドワークのインタビューでお世話になった方から「あの子がまた会いに来てくれたんですよ」と教えてもらったときは本当にうれしくて。私たちが子どもたちにつくりたかった「きっかけ」って、こういうことだ!と感じられたんです。
茨城県内には五感を刺激する体験と、本気で向き合う大人たちの熱意があります。今年度もよりよい探究となるよう、引き続きお手伝いさせていただきます!
私たち森と未来の学校は、茨城県での教育旅行を通して「子どもたちの学び・体験のアップデート」、「茨城県の社会問題を解決」することを目指しています。
探究の種がたくさんある茨城での「旅」は、日帰りも可能。首都圏のお子さんたちが、これからの変化が多い時代を生き抜く力をつけるのにぴったりな場所です。
茨城を舞台に探究型教育旅行をしようと考えている際は、お気軽にお問い合わせください。
記事:荒川ゆうこ